Six Partitas, First Part of the Clavier Ubung BWV 825-830
Barenreiter URTEXT (ベーレンライター原典版)　
ドイツ人若手ピアニストのなかで、バッハの演奏に定評のあるラグナ・シルマーによる運指つき（シルマーは現在マンハイム音楽大学教授）。

運指については、できるだけ無理のない手の形、位置で演奏することで、曲の音楽的な流れを理解することに重きをおいており、このパルティータでは、比較的に詳細な指使いの指示を行っている。
基本的には、現代のピアノの力のかかり方およびハンマーのバランスに基づいた運指を行い、できるだけ手全体を使うように考慮している（親指に黒鍵をあてはめることを含む）。そのことによって、手自体が、安定した姿勢にとどまることを目的としている。

右手と左手のバランスについては、バッハが彫版見本を制作した初版楽譜の符幹（ぼう）のつき方を参考にしている。これによって、パルティータ1番のジークは、伝統的な左手右手交差にならずに弾けるようになっている。

装飾音の運指については、本書に印刷されたものだけを取り上げているので、他の装飾音を取り入れ、解釈も変化する場合は、おのずと指使いも変化してくる。運指は個人によって違いがあるべきものなので、本書の運指もひとつの提案として受けとめ、独自の解釈とそれにぴったり合った運指を見つけてほしい。